この記事の結論
『続いてしまう環境』とは、決めた行動から逃げられないよう自分を囲う環境ではありません。「なんか気になる」という微細なCurrentを観測し、1センチだけ動き、次の接続が現れられる環境です。習慣作家として積み重ねた意志力・脳科学・環境設計を否定せず、その奥に残っていた自己コントロールを手放した先に生まれました。
習慣作家として、気合・脳科学・環境設計で自分を動かし続けた末に、Currentへ移行したShunpeter Zです。これは成功法則の紹介ではなく、「続ける私」から「続いてしまう場」へ変わった本人の実践記録です。
Shunpeter Z
第1世代|気合と規律で自分を動かす
もともとの私は、「流れに身を任せる」といった言葉とは無縁でした。 海外でMBAを取得し、外資系投資銀行、会計事務所、ベンチャーキャピタルを経て起業。戦略、KPI、PDCA、期限、責任。数字と論理で現実を動かす世界を生きてきました。 努力が嫌いだったわけではありません。むしろ汗臭い努力論が好きでした。 目標を決め、計画を作り、できない自分を叱咤し、峠を越える。成果も出ました。しかし、常に「自分がコントロールしなければ崩れる」という緊張がありました。第2世代|脳を騙して習慣を自動化する
英会話スクールを運営する中で、気合だけでは多くの人が続かないことが分かりました。 そこで、脳科学、心理学、行動経済学を調べ、うまく続いているお客様の行動を分析しました。その結果をまとめたのが、2020年の習慣本『脳を騙せば誰でも続けられる――人生を変える習慣構築法』です。 当時の本には、こう書いています。答えは才能ではなく、脳を騙す「習慣化=オートメーション化」にあった。気合でロケットスタートするのではなく、ベビーステップで抵抗を小さくする。挫折しやすい時期を「峠」として先に知る。自己コントロールのコツを使い、反復によって自動運転へ移す。 これは第1世代からの大きな進歩でした。 「意志が弱い人」という人格評価をやめ、誰でも再現できる仕組みへ移したからです。実際、英語学習のように反復が必要な基礎技能では、現在も有効な方法です。
それでも「私が私を動かす」構造は残った
脳を騙す方法は、気合より優しく、再現性も高い。 しかし、よく見ると管理者は同じです。 Meが「これは将来のために必要だ」と決め、抵抗する脳を理解し、報酬やベビーステップで誘導し、望ましい行動へ連れていく。 腕力で押す代わりに、操作レバーが巧妙になっただけとも言えます。 脳科学を学べば学ぶほど、自分をうまく管理できるようになります。一方で、管理している自分自身は休めません。第3世代|環境を設計して意志力を使わない
次に現れたのが環境設計です。 行動の合図を決める。道具を近くへ置く。通知を切る。望ましい行動の摩擦を下げ、誘惑の摩擦を上げる。 これはさらに大きな進歩でした。毎回、意志力や報酬で自分を操作しなくても、環境に入れば行動が起きやすくなります。 ただし、ここにも「先に正しい行動を決め、その行動しか起きにくい水路を作る」という構造は残ります。 詳しい違いは、「習慣化と環境設計|続けやすい環境と『続いてしまう環境』の違い」で整理しています。
第4世代|Currentを発見する
転換点は、「もっと上手に続ける方法」を発見したことではありません。 続けさせようとすること自体をやめたことでした。 2026年5月から6月にかけて、TODOリストと緻密な計画をいったん手放しました。そして、「これをやらなければ」ではなく、「なんか気になる」「少し触ってみたい」という微細なシグナルに従って、1センチだけ動く実験を始めました。 私はこの、今ここですでに動いている流れをCurrentと呼んでいます。 Currentは大興奮や強いワクワクだけではありません。- 理由は説明できないが、少し気になる
- 一文書くと、次の一文が現れる
- 一人との会話から、別の企画へつながる
- 作ったものが次の人・情報・媒体を呼び込む
- 疲れたら別の流れへ移り、あとで自然に戻る
計画を捨てた結果、何が起きたのか
当初、私は「本を書こう」「新サービスを立ち上げよう」「大量のサイトページを作ろう」と一括計画したわけではありませんでした。 GWの小さなざわつき、コーチング中のひらめき、妻との雑談。そこから1センチ動いた結果、流れが別の流れへ接続しました。 2026年6月には、本9冊(英語版3冊を含む)、200ページを超える中級英語教材、オンライン新サービスbeyondZ EnglishとbeyondZ Labが形になりました。 7月にはオウンドメディアを立ち上げ、約600ページを制作しました。 この数字が重要なのは、「たくさん作ったから偉い」という意味ではありません。 長年、計画しても着手できなかった中級教材のようなものまで、計画と自己強制を手放したときに動き始めたことです。『続いてしまう環境』とは何か
『続いてしまう環境』は、自分を逃げられなくする仕組みではありません。 Currentを発見し、邪魔せず、次の接続が現れられる状態です。1.1センチだけ動ける
完成や継続を約束せず、一文、一検索、一会話だけ試せます。2.未完成を置いておける
毎回ゼロから意志力で再開せず、次に触れたとき流れへ戻れる痕跡があります。3.行動の変更が許される
本から教材、教材からサービス、サービスから記事へ移っても、同じ創造の流れなら「脱線」としません。4.他者と世界から反応が返る
Currentは頭の中だけで完結しません。会話、読者、顧客、スタッフ、AI、偶然の出来事から次の材料が返ります。5.休息も流れに含まれる
止まったように見える時間を失敗にせず、熟成や方向転換の可能性を残します。6.結果を先に固定しない
計画は命令書ではなく仮設水路です。現れた現実を見て、必要なら水路を動かします。過去の習慣本は間違っていたのか
間違いだった、とは思いません。 気合しか知らなかった人に、ベビーステップや自動化を渡す。反復が必要な英語学習を、一般の人にも続けやすくする。その役割は現在もあります。 ただし、それが最終地点ではありませんでした。 第1世代の規律、第2世代の脳科学、第3世代の環境設計。それぞれの段階で摩擦は減りました。しかし、「私が私を望ましい未来へ運ぶ」というDoingの前提は残っていました。 Currentへの移行は、過去を否定する革命ではなく、過去の方法が届かなかった場所まで進む更新です。脳を騙すから、脳を観測するへ
以前は、脳を行動のハンドルとして扱いました。抵抗する脳を騙し、習慣回路を作れば動けると考えました。 現在は、脳や身体の状態をダッシュボードとして見ます。 ただし、ドーパミンが単なる結果で、行動へ影響しないという意味ではありません。脳・身体・行動・環境は相互に変化します。大切なのは、特定の物質を出して自分を操作するのではなく、どの流れで注意や身体や接続が変わるかを観察することです。 科学的な整理は、「脳科学で習慣化する方法は間違い?ドーパミンは燃料ではなく結果なのか」で詳しく扱っています。「続ける」から「創造を止めない」へ
過去の私は、同じ望ましい行動を繰り返すことを継続だと考えていました。 現在は、継続をもっと大きく捉えています。 昨日と今日で行動が違ってもよい。フローに入れない日があってもよい。休み、話し、読み、別のものを作ってもよい。 内側の興味が世界と接続し、次の創造へ姿を変えているなら、流れは続いています。 習慣・フロー・Currentの違いについては、「習慣とフロー状態の違い」でも整理しています。習慣作家が最後に手放したもの
意志力でも、脳科学でも、環境設計でもありません。それらを使って「私が私を動かす」という前提でした。動かすのをやめたとき、すでに動いていた流れが見えるようになりました。


